第96回高校サッカー選手権 前橋育英高校初優勝にて閉幕 大会総評

今年度第96回の高校サッカー選手権は前橋育英高校の初優勝で幕を閉じる事となった。

決勝戦も観戦していたが、両チーム共にミスの少ない非常に引き締まった試合であった。初優勝を遂げた前橋育英高校には改めてお祝い申し上げたい。
またここで、今大会を通して見て感じた事を整理しておきたい。筆者がみて感じた今大会の特徴は以下の通りだ。

1.指導者の成長による地方高校の躍進
ベスト8に残った高校の中で目を引いたのは、上田西高校、日本文理高校、明秀日立高校、矢板中央高校、米子北高校といった新興勢力の高校だ。

いずれの高校も高校サッカー選手権での優勝経験は無く、今までベスト8にも残った事が無い高校が大半だ。そのような高校が今大会躍進している背景として、Jリーグ下部組織が整備されてきた点とプリンスリーグにより強豪高校同士の試合が整備されてきた点が効果を挙げてきているであろうと思われる。

Jリーグの下部組織やサッカースクールが充実する事で全国のクラブチームに優秀な指導者が育つ事になり、その結果優秀な選手が全国で育つようになってくるという好循環が生まれるのだ。

Jリーグの下部組織は必ずしも全員がトップチームやユースチームに昇格する事は出来ないのだが、それでも中村俊輔や本田圭佑のようにユースチームに昇格出来ずに近隣の有力高校サッカー部に入学後成果を上げ、その結果ユースチームの選手を追い抜きJリーグのトップチームと契約した例も豊富にあるのだ。
やはりJリーグ下部組織の存在価値は改めて大きいと考えさせられる。

2.トーナメント方式を意識した戦いの徹底

高校サッカー選手権はご存知の通りリーグ戦ではなく、トーナメント方式の戦いだ。
試合開始からチームのリズムが出るまではディフェンスラインでリスクを冒さずに相手ディフェンスラインの裏側にボールを蹴り込んでくるといった戦い方をとっているチームが数多く見られた。

まさにトーナメント方式への戦い方のシフトと言ってもいいだろう。リーグ戦では引き分けもまだ良しとされる場面でも高校サッカー選手権では即PK戦となるため、普段とは少し異なる戦い方とならざるを得ないのだろう。

現在の日本代表監督であるハリルホジッチ監督が掲げる縦に速いサッカーに影響されているような高校もあったように感じた今大会であった。

3.ロングスローの多用

ここ数年でロングスローを使ってゴール前の競り合いから点を取ろうとするチームが増えてきた感がある。
蹴り込んでロングスローからの得点を狙っていくやり方は一つのチーム戦略ではあるのだが、見ている方としては若干残念な気がするのは筆者だけだろうか。
必ず勝たないと次に進めないトーナメント方式だからこそこのような戦術を取るチームが増えてきているのかもしれない。
ロングスローに依存しない攻撃力や、ロングスローに対応出来る守備力を備えておく事が今後勝ち抜く上で必要になってくるだろうと思われる。

4.基礎技術の差が勝敗を分ける鍵に

決勝戦に進出した前橋育英高と流通経済大柏高の2チームのサッカーを見ていると、ボールを止める、蹴る、またカバーする、フォローするといった基礎技術が徹底されている感じを受けた。

高校サッカー選手権のようなトーナメント戦においては、初戦などはどのチームのコンディションも万全であるためキック&ラッシュの戦い方で勝てる可能性もあるのだが、数試合こなしていくと、やはり基礎技術がしっかりしていないチームはボロが出てしまい、失点をしてしまう、そんな傾向があるように感じた。

走り勝つという精神論も非常に大事な事ではあるのだが、ワンプレーを大切にし、精度を上げるという積み上げも非常に大切なものだと改めて考えさせられた大会であった。

ここで述べさせてもらったように高校サッカー選手権も時代と共に変わり続けている。
進化と呼ぶべきか、変化と呼ぶべきか悩ましいところだが、一つ言える事は、高校サッカー選手権は日本サッカーの現在を象徴する存在だということだ。
今後の日本サッカーがどういう方向に進もうとしているのかが見えてくる大会と言っていいだろう。
今から来年年末も待ち遠しいかぎりだ。

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